中島京子『平成大家族』

平成大家族

平成大家族

家族を描いた小説だが、引き篭もり、認知症、「嫡出性推定」の子の誕生など、近年の社会問題が織り込まれながら、家族それぞれのエピソードが絡み合っていく。「寺内貫太郎一家」や「サザエさん」がもし21世紀に誕生していたら、こんな感じになっていたのかも知れない。

福田一郎『ドバイにはなぜお金持ちが集まるのか』

ここ数年で突如巨大化したバブルシティーの詳細を紹介した本。ガイド的な意味合いもあるので、あまり否定的なことは書かれず、急速に発展した背景を探っている。企業は一年ごとの「更新制」であることや、住所が存在しない点など、ドバイならではの特殊性も伺える。少なくとも、日本人が抱きがちだったイスラムのイメージ(=砂漠、石油、戦争)は払拭した方がいい。

藤川大祐『ケータイ世界の子どもたち』

ケータイ世界の子どもたち (講談社現代新書 1944)

ケータイ世界の子どもたち (講談社現代新書 1944)

「モバゲー」「iらんど」「プロフ」など、大人よりも子供の世界でより発展しているケータイのサービスを紹介しながら、一方で「学校裏サイト」やネットいじめなどの問題点も同時に紹介。「ケータイが欲しい」と子供に言われたら、排除・否定する方向ではなく、話し合ってルールを作ってから持たせることを提唱する。

たとえば、子どもは「いざというときに連絡がとれる」と言うかも知れません。しかし、いざというときには、ケータイがあってもやはり危険です。むしろ、知識の中でどこが危ないのかを日常からよく知っておき、何かあったときに周辺にいる人に助けを求められるようにするほうが現実的です。ケータイがあるから安全などとはいえません
(183〜184ページ)

夏の文庫フェア小冊子に見る「繋がり」リスト

夏の文庫フェアといえば、新潮、角川、集英社。それぞれに特設サイトがあるが、最もサイトが充実しているのは新潮社である。過去のデータベースまである充実ぶりに、いろいろ調べたくなってしまう。まあ、それは今回置いといて。
新潮文庫の100冊 2018
http://www.kadokawa.co.jp/dis/summer/
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi2008/top.html


ところで、各社の小冊子を見ると、角川・集英社の冊子には、それぞれの作品紹介のあとに「次に読むならこれどうよ?」的なリンクがある。これって、ずーっと繋がっているのか、それともいくつかのループができているのか? 気になる。てなわけで、堀井憲一郎的にずんずん調査してみました。


まずは角川から。

●角川文庫「発見。角川文庫夏の100冊」の[次に読む本を発見]つながり

・ループA
『いつかパラソルの下で』森絵都
→『ジョゼと虎と魚たち田辺聖子
→『キッチン』吉本ばなな
→『グラスホッパー伊坂幸太郎
→『GO』金城一紀
→『ウォーターボーイズ矢口史靖
→『DIVE!!』森絵都
→『失はれる物語』乙一
→『きまぐれロボット』星新一
→『あやし』宮部みゆき
→『知っておきたい日本の神様』武光誠
→『数学物語』矢野健太郎
→『ダ・ヴィンチ・コードダン・ブラウン
→『嘘つきアーニャの真っ赤な真実米原万里
→『アーモンド入りチョコレートのワルツ』森絵都
→『月魚』三浦しをん
→『小学生日記』華恵
→『つきのふね』森絵都
→『約束』石田衣良
→『パイロットフィッシュ』大崎善生
→『こヽろ』夏目漱石
→『ドグラ・マグラ夢野久作
→『書を捨てよ、町へ出よう』寺山修司
→『ポケットに名言を』寺山修司
→『堕落論坂口安吾
→『舞姫うたかたの記森鴎外
→『坊っちゃん夏目漱石
→『兎の眼灰谷健次郎
→『海と毒薬』遠藤周作
→『動物農場ジョージ・オーウェル
→『徒然草
→『論語加地伸行
→『知っておきたい日本の名字と家紋』武光誠
→『絵草紙 源氏物語田辺聖子
→『源氏物語
→『枕草子
→『美女入門』林真理子
→『ファースト・プライオリティー山本文緒
→『落下する夕方江國香織
→『愛がなんだ』角田光代
→『恋愛中毒』山本文緒
→『冷静と情熱のあいだRosso』江國香織
→『冷静と情熱のあいだBlu』辻仁成
→『ツ、イ、ラ、ク』姫野カオルコ
→『ある愛の詩新堂冬樹
→『いつかパラソルの下で』森絵都


・ループB
人間失格・桜桃』太宰治
→『疾走』重松清
→『青の炎』貴志祐介
→『夏のこどもたち』川島誠
→『楽園のつくりかた』笹生陽子
→『アルテミス・ファウル』オーエン・コルファー
→『ペギー・スー』セルジュ・ブリュソロ
→『アルケミストパウロ・コエーリョ
→『サウスバウンド』奥田英朗
→『バッテリー』あさのあつこ
→『空の中』有川浩
→『遠い海から来たCOO』景山民夫
→『ミミズクと夜の王紅玉いづき
→『彩雲国物語雪乃紗衣
→『フルメタル・パニック!賀東招二
→『四畳半神話大系森見登美彦
→『走れメロス太宰治
→『人間失格・桜桃』太宰治


・ループC
涼宮ハルヒの憂鬱谷川流
→『NHKにようこそ!』滝本竜彦
→『パズル』山田悠介
→『ドミノ』恩田陸
→『フェイク』楡周平
→『探偵倶楽部』東野圭吾
→『世界の終わり、あるいは始まり』歌野晶午
→『天使の爪』大沢在昌
→『さまよう刃東野圭吾
→『殺人の門』東野圭吾
→『償いの椅子』沢木冬吾
→『天使と悪魔』ダン・ブラウン
→『ブレイブ・ストーリー宮部みゆき
→『時をかける少女筒井康隆
→『涼宮ハルヒの憂鬱谷川流


・ループD
注文の多い料理店宮沢賢治
→『遠野物語柳田国男
→『山椒大夫高瀬舟阿部一族森鴎外
→『村田エフェンディ滞土録』梨木香歩
→『銀河鉄道の夜宮沢賢治
→『不思議の国のアリスルイス・キャロル
→『注文の多い料理店宮沢賢治


・ループE
『ゆめつげ』畠中恵
→『嗤う伊右衛門京極夏彦
→『覘き小平次京極夏彦
→『巷説百物語京極夏彦
→『羅生門・鼻・芋粥芥川龍之介
→『蜘蛛の糸地獄変芥川龍之介
→『変身』フランツ・カフカ
→『水の時計』初野晴
→『ベロニカは死ぬことにした』パウロ・コエーリョ
→『ゆめつげ』畠中恵


・ループF
二十四の瞳壺井栄
→『太陽の子』灰谷健次郎
→『新版 悪魔の飽食森村誠一
→『電池が切れるまで』すずらんの会
→『アンネ・フランクの記憶』小川洋子
→『霧笛荘夜話』浅田次郎
→『ベルナのしっぽ』郡司ななえ
→『生きていてよかった』相田みつを
→『新版 にんげんだもの相田みつを
→『二十四の瞳壺井栄

結果、6つのループから成っていた。一部同じ作家で繋がっているものあるが、なるべくいろんな作家に触れさせようとしている節が感じられ、苦労の跡が伺える構成だ。森絵都の割り振り方がいい例(ループA)。しかし森絵都4作品も入ってるよ。多すぎないかい。角川文庫は帯をよく見ると「10代のうちに読んでおきたい本」みたいな括りもあるので、その辺のセレクションが反映しているのかも知れない。
こうして並べてみると、いろいろ面白い発見がある。『こころ』の次がなんで『ドグラ・マグラ』よ、なんてのもあるが、絶妙な繋ぎもあって感心したり。『空の中』→『遠い海から来たCOO』の繋がりが一番感動した。それとループCにおける、『ハルヒ』→『NHK』→山田悠介、の次が『ドミノ』っていう提案も巧い。山田悠介のあとで恩田陸読んだら、そりゃ感動するだろうし、『ドミノ』の方が完成度高いから新しい読者層が開拓できるよ。そこから歌野・東野・大沢に誘導するセンスは素晴らしいとしか言いようがない。これ編集した人に脱帽。

集英社文庫「ナツイチ」の[次はコレ!]つながり

地獄変芥川龍之介
→『人間失格太宰治
→『汚れちまった悲しみに……』中原中也
→『二十億光年の孤独』谷川俊太郎
→『絵のない絵本』アンデルセン
→『狼王ロボ シートン動物記』シートン
→『星の王子さまサンテグジュペリ
→『ショート・トリップ』森絵都
→『光の帝国』恩田陸
→『蒲公英草紙』恩田陸
→『はなうた日和』山本幸久
→『オテル モル』栗田有起
→『漢方小説』中島たい子
→『がんばらない』鎌田實
→『それでもやっぱりがんばらない』鎌田實
→『「話して考える」と「書いて考える」』大江健三郎
→『いじめの光景』保坂展人
→『ゆうゆう人生論』ひろさちや
→『救命センターからの手紙』浜辺祐一
→『救命センター部長ファイル』浜辺祐一
→『M8』高嶋哲夫
→『危険な夏』北方謙三
→『水滸伝(1)』北方謙三
→『チェ・ゲバラの遥かな旅』戸井十月
→『相克の森』熊谷達也
→『朱夏宮尾登美子
→『風の影』C・R・サフォン
→『白夜行東野圭吾
→『分身』東野圭吾
→『I'm sorry, mama.』桐野夏生
→『家、家にあらず』松井今朝子
→『第三の時効横山秀夫
→『最後の銃弾』サンドラ・ブラウン
→『ザ・プレイ』アリスン・ブレナン
→『今夜 誰のとなりで眠る』唯川恵
→『キスよりもせつなく』唯川恵
→『愛には少し足りない』唯川恵
→『実戦!恋愛倶楽部』一条ゆかり
→『源氏に愛された女たち』渡辺淳一
→『小悪魔な女になる方法』蝶々
→『薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木』江國香織
→『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』江國香織
→『年下の女友だち』林真理子
→『葡萄物語』林真理子
→『瑠璃の海』小池真理子
→『こころ』夏目漱石
→『伊豆の踊子川端康成
→『いちご同盟三田誠広
→『海を抱く』村山由佳
→『青のフェルマータ村山由佳
→『天使の梯子村山由佳
→『夢のあとさき』村山由佳
→『君に舞い降りる白』関口尚
→『MOMENT』本多孝好
→『ネバーランド恩田陸
→『GO−ONE』松樹剛史
→『フレフレ少女』橋本裕志
→『花より男子ファイナル下川香苗
→『スローグッドバイ』石田衣良
→『愛がいない部屋』石田衣良
→『コンビニ・ララバイ』池永陽
→『さよならバースディ』荻原浩
→『夏と花火と私の死体』乙一
→『平面いぬ。』乙一
→『暗黒童話』乙一
→『秘密のひととき』赤川次郎
→『地下街の雨』宮部みゆき
→『となり町戦争』三崎亜記
→『河童』芥川龍之介
→『うわさの神仏』加門七海
→『怪魚ウモッカ格闘記』高野秀行
→『ショートソング』枡野浩一
→『ハナシがちがう!』田中啓文
→『天切り松闇がたり 闇の花道』浅田次郎
→『天切り松闇がたり 残侠』浅田次郎
→『天切り松闇がたり 初湯千両』浅田次郎
→『天切り松闇がたり 昭和侠盗伝』浅田次郎
→『漫画版 日本の歴史1』岡村道
→『漫画版 日本の歴史2』吉村武彦
→『在日』姜尚中
→『そうだったのか!現代史』池上彰
→『オシムの言葉木村元彦
→『オリンピア沢木耕太郎
→『桑田真澄ピッチャーズバイブル』石田雄太
→『がばいばあちゃん 佐賀から広島へめざせ甲子園』島田洋七
→『のほほん絵日記』さくらももこ
→『さくら日和』さくらももこ
→『ジャージの二人長嶋有
→『真夜中のマーチ』奥田英朗
→『黒笑物語』東野圭吾
→『カスに向かって撃て!』J・イヴァノヴィッチ
→『おばちゃまは飛び入りスパイ』ドロシー・ギルマン
→『東京バンドワゴン小路幸也
→『岳物語椎名誠
→『ハーケンと夏みかん椎名誠
→『落ちこぼれてエベレスト』野口健
→『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』中島らも
→『娼年石田衣良
→『蛇にピアス金原ひとみ
→『地獄変芥川龍之介

なんとなんと、集英社は全部が繋がっていた。まあ普通ならこれを目指すよね。
しかし、集英社のリンク具合は面白味がない。同じ作家繋がりのなんと多いこと。こんなん素人でも思いつく。角川は、このリンクを確かめるために冊子のページを繰りまくったので、かつてのゲームブックを読むような楽しさがあったが、集英社では同じページに留まることが多くて繋がりも割と平凡。わくわくできなかった。


この調査はメルマガに流用しようと考えていたが、あまりにも長くなったのでこちらにアップした。
(メルマガも3週間放置していて申し訳ありません。そろそろ次号を配信します)