詠坂雄二『リロ・グラ・シスタ』
リロ・グラ・シスタ―the little glass sister (カッパ・ノベルス)
- 作者: 詠坂雄二
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/08
- メディア: 新書
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この次作が『遠海事件』になるわけで、ものすごい成長だと思うと同時に、この時点で才能を見抜いていた版元や推薦者(綾辻行人、佳多山大地)は慧眼である。
講談社の「100冊書下ろし」と、かつての「推理特別書下ろし」
今日(8月24日)の朝日新聞朝刊、講談社の全面広告が掲載されていました。正月の広告でも予告されていた、創業100周年記念の書下ろし100冊の発表でした。2008年11月から、二年間かけて、100人の作家による書下ろし作品を出す、というものです。
具体的な作家名は、こちらを見ていただくとしましょう(手抜きですみません)。
http://d.hatena.ne.jp/CAX/20080824/kakioroshi100_kodansha
ただ、個人的には、楽しみな反面、あまり「わくわくしない」気がします。別に作家名を予告しなくても、書下ろしで出すものは全部「100周年記念書下ろし」にすればいいのでは、とも思います。予告しておきながら書けなかった場合が大変でしょうし。
ところで講談社は、かつても「推理特別書下ろし」と銘打った叢書シリーズを出していました。こっちの方が今回よりも遥かに「わくわくした」覚えがあります。ミステリの書下ろしといえばまだ「ノベルス」がメインだった時代でした。
一部持っている本もあるので調べようとしたのですが、押入れの奥にあってすぐには見つけられませんでした。ネットで調べると、なんとなんと、きちんとデータベースにされていたページがありました。こういうの、大事ですね。
http://www.inv.co.jp/~baba/book/list/kodansha.html
第一期が1986年から刊行、そして第三期は「創業80周年記念」だったんですね。
そして改めて、レベルの高さに唸ります。とりわけ第一期は、岡嶋二人『そして扉が閉ざされた』と志水辰夫『オンリィ・イエスタデイ』の同時刊行が凄い。私も両方買いました。その次が島田荘司『異邦の騎士』と笠井潔『復讐の白き荒野』が同時刊行。次が船戸与一『伝説なき地』上下巻。そして最後に連城三紀彦『黄昏のベルリン』で締める。いやー、もうお腹一杯です。
さらに第二期には東野圭吾『眠りの森』があったり、第三期には泡坂妻夫『毒薬の輪舞』、島田荘司『暗闇坂の人喰いの木』、東野圭吾『変身』など。もうこんなレベルの高いシリーズ、出ないかも知れませんね。
廣瀬陽子『コーカサス 国際関係の十字路』
- 作者: 廣瀬陽子
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/07/17
- メディア: 新書
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とにかく「なんでグルジアであんなに揉めているのか」が知りたくて、この本が実にタイムリーなタイミングで出ていた(7月の新刊)ので買ったのだが、結論から言えば、「これを読んだくらいではさっぱり判らない」であった。問題が多すぎるのだ。
グルジア問題のベースにあるのは、ロシアの影響下から離れたくてNATO入りを画策しているグルジアと、まだ手元に置きたいロシアの思惑の違い、なのだが、そこに民族問題が各地で勃発しており、特に「南オセチア共和国」の問題が表面化していて、ロシアが絡んできているらしい(「北オセチア」がロシア領のため)。
チェチェンについての記事もあるが、こんなのを読むと、辛い気持ちになる。以下引用。
チェチェンの自爆テロ事件の特徴として、実行犯が女性であることが多い。夫や子供を殺害されたチェチェン人の妻や母が、激しい復讐心と愛する人を失った絶望感のなかで、報復のためにテロに関与する傾向が強く見られるからである。「黒い未亡人」という夫を失った妻のテロ組織も存在するというが、自主的に、というよりは、グループの実態を知らぬままに仲間となり、テロに関与させられるケースが多いようだ。
(91〜92ページ)