廣瀬陽子『コーカサス 国際関係の十字路』

コーカサス国際関係の十字路 (集英社新書 452A)

コーカサス国際関係の十字路 (集英社新書 452A)

今問題となっているグルジアがあるのが、旧ソ連黒海カスピ海に挟まれたコーカサス地方である。グルジアの他に、アゼルバイジャンアルメニアの三国があり、いずれも数多くの問題を抱えている。さらにその北部には、紛争が絶えないチェチェンもある。現在世界で最も危険な地域でもあるこの地方の現状と問題点を総括した一冊だ。
とにかく「なんでグルジアであんなに揉めているのか」が知りたくて、この本が実にタイムリーなタイミングで出ていた(7月の新刊)ので買ったのだが、結論から言えば、「これを読んだくらいではさっぱり判らない」であった。問題が多すぎるのだ。
グルジア問題のベースにあるのは、ロシアの影響下から離れたくてNATO入りを画策しているグルジアと、まだ手元に置きたいロシアの思惑の違い、なのだが、そこに民族問題が各地で勃発しており、特に「南オセチア共和国」の問題が表面化していて、ロシアが絡んできているらしい(「北オセチア」がロシア領のため)。
チェチェンについての記事もあるが、こんなのを読むと、辛い気持ちになる。以下引用。

チェチェン自爆テロ事件の特徴として、実行犯が女性であることが多い。夫や子供を殺害されたチェチェン人の妻や母が、激しい復讐心と愛する人を失った絶望感のなかで、報復のためにテロに関与する傾向が強く見られるからである。「黒い未亡人」という夫を失った妻のテロ組織も存在するというが、自主的に、というよりは、グループの実態を知らぬままに仲間となり、テロに関与させられるケースが多いようだ。
(91〜92ページ)