眉村卓『妻に捧げた1778話』(ISBN:410610069X)

新潮新書の新刊。今日、紀伊国屋のサイトでデイリー1位になっていたので手に取ってみたらすごくいい本で、買おうと思っていたのだが店にあった最後の一冊が売れてしまった。次に入ったら買おう。
眉村卓の奥さんが癌で倒れて以来、妻のために「一日一話ショートショートを書く」ことを自分に課し、奥さんが亡くなるまで書き続けたことは有名な話だが、その周辺エッセイと「たった一人のために書いた作品」の一部を併載した、他に類書はないであろう闘病記。特に最後の最後はもう小説になってなくて、ただ奥さんを心配した文章のみが書き綴られていたのが眉村の心の動きを表しているし、奥さんが亡くなって荼毘に付して帰宅した時に書いた「最終回」という作品は、ほとんど白紙状態なのにもう涙なくしては読めない作品で、なんかすごいいいものを感じた。眉村卓は本当に奥さんを愛していたのだと思うし、奥さんも本当に愛されていて、幸せだったのではないだろうか。こういう夫婦愛は、ちょっと真似できないレベルのものだ。
これが『バカの壁』『死の壁』『口のきき方』に続く新潮新書のヒット作になってくれないだろうか。こういう本こそが売れて欲しい本である。私は自分の店で「仕掛ける」ことに決めた。
(追記)「アンビリバボー」で紹介されたのが「一位」の原因らしい。これは売れるだろう。売れて欲しい。