五十嵐貴久『TVJ』
- 作者: 五十嵐貴久
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/01/15
- メディア: 単行本
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突然何者かにジャックされるTV局と、それに一人で立ち向かう女性社員、という構図は「ダイ・ハード」みたいなものを連想させる。基本はそうなのだが、由紀子は戦術にも長けていないごく普通の女性であり、決して強くないので、あたふたしながら危機を逃れていく過程が面白い。それ以上に、謎の占拠集団の動機が全く分からないので、ページを繰る手も止められない。主張・要求を生中継するというアイデアも秀逸。例によって細かい伏線が巧く活かされており、最後まで飽きさせないエンテタインメントに仕上がっている。中盤で犯人グループの素性が一旦明かされたときに、みんなが「それなら仕方がないな」と同情するシーンがあるが、そんなこと言ってる場合じゃないだろう、とは思った。それと、ビルの見取り図は本文ラストではなくて最初に挿入して欲しかった。目次に明記されていたが、全く気付かなかったので。