伯方雪日『誰もわたしを倒せない』

誰もわたしを倒せない (ミステリ・フロンティア)

誰もわたしを倒せない (ミステリ・フロンティア)

 プロレス界を舞台にした本格ミステリ連作集。「ミステリ・フロンティア」の中でも読み残しの一冊(あとは三津田信三だけだが、ちょっと守備範囲じゃなさそうなので未読)。プロレスに詳しくないと面白くないのかなあと予想していたが、全然そんなことはなく、本格としてもしっかり作られている。以下ミニコメ。
「覆面」:後楽園で殺されていた、襟足から後頭部まで髪が切られていた男。そして孤児院からスカウトされ、プロレス修行に励んだ男の物語。マスクマンというアイテムを巧く利用したトリックと、殺人を犯した瞬間にプロレス的な観念が支配するところが面白い。
「偽りの最強」:プロレスにおいて「強い」とは、「世界最強」とは何かを問いながら、それをミステリのプロットに嵌め込むことに成功している。
「ロープ」:意外性が全て。騙されてしまった。この位置にあるのもそのためだが、殺人トリックなどはちょっと無理があるか。
「誰もわたしを倒せない」:世界最強の男・ダレンが控え室で「チョークスリーパー」で殺されていた。「世界最強の男」をプロレス技で殺せる人間はこの世にいないはずなのに……。これもプロレスの概念が重要になる。東京ドームを利用したトリックが楽しめる。
「エピローグ」:うわーそういう落ちか!