「復讐者に憐れみを」(2002年韓国作品)

聴覚障害者のリュ(シン・ハギュン)は工場で働きながら、腎臓病で苦しむ姉(イム・ジウン)を助けようと腎臓移植手術を考えている。だが自分の腎臓は不適格で、なかなか提供者も見つからない。仕方なく臓器売買業者を頼ったが、金と自分の腎臓を取られて逃げられてしまい、さらに工場もクビになった。だがその直後に腎臓提供者が見つかってしまう。手術までには1週間しかないが、再びそれだけのお金を作るのは至難の技だ。そこに恋人のヨンミ(ペ・ドゥナ)から危険な提案を受ける。金持ちの子どもを誘拐し、お金を巻き上げればいい。子どもは金が入ったら返せばいいのだから問題はないはずだ。工場の社長ドンジン(ソン・ガンホ)の娘を誘拐し、身代金を奪うことにも成功する。リュは娘と遊んであげていたが、姉は誘拐という犯罪への自責の念にさいなまれ、浴槽で自殺してしまう。哀しみにくれて川(池か?)で埋葬していた最中、人質の娘が水に溺れて死んでしまった。リュの臓器売買業者への復讐心と、ドンシンの誘拐犯への復讐心が爆発しようとしていた。
これまた気が滅入る映画だ。パク・チャヌク監督が「オールド・ボーイ」の前に撮った映画で、かなりショッキングでもあるし、何よりも誰一人として救われない(「オールド・ボーイ」の方がまだ救いがある)。それでもこれだけ観客の目を捕らえて離さないのはさすが。一つ一つのシーンが美しくも残酷で残虐。普通の日々でも、ふと歯車がかみ合わなくなってどんどん大変な事態になっていくケースもままあるものだが、そういうことを最も極端な形で表しているとも言える。例えばリュが少女を死なせるのは、彼女の「悲鳴」が聞こえなかったからだ。
ソン・ガンホ、シン・ハギュン、ペ・ドゥナの三人の演技は、鬼気迫るものがある。シン・ハギュンとペ・ドゥナの苦しくも激しいセックスシーンは忘れられないだろう(全然関係ないが、ペ・ドゥナが裸身を晒しているのも要チェックだしファンにはショックだ。以前も裸のシーンが出る映画があったが、それは代役だったらしい)。ソン・ガンホの最後のシーンがそのままエンドクレジットに続いていくのは、すごいというか残酷で哀しい場面だ。