藤岡真『ギブソン』

ギブソン (ミステリ・フロンティア)

ギブソン (ミステリ・フロンティア)

おれは今朝もいつものように、ゴルフコンペに行く高城部長を迎えにコンビニの前で車を止めて待っていた。が、時間になっても部長はやって来ない。家を訪ねた。息子が出てきたが、父親はいつも通り出かけたという。しかしどこにもおらず、ゴルフ場にも現れず、会社の部長席に座ることもなかった。高城秀政は8月2日午前6時、どこへともなく失踪してしまったのだ……おれは後輩とともに、高城部長を探すことにした。彼が向かったのは「右の道」「左の道」「正面の道」の三通りしかあり得ない。聞き込みをするおれたちの前に現れるのは意味不明な手掛かりばかり。消えた消防車、謎の銃声(爆竹か?)、同じく行方不明になった爺さん、部長のかつての恋人とその娘の影、そして、おれの捜索を邪魔しようとする男たち……。
読めども読めども事件の全貌どころか片鱗すら見えてこない小説で、一体どういう風に収束するのかと思っていたら……ありゃりゃー、そんな話だったのか! さすが『ゲッベルスの贈り物』の作者らしい、捻くれたミステリである。真相は衝撃的だが、伏線もたくさん張られていることに気付かされるのだ。もう一度読み返して、伏線を確認する作業が必要だろう。読み返すごとに新たな発見がありそうだ。