谷川流『絶望系 閉じられた世界』

杵築(きづき)のところに建御(たけみ)から電話が入った。「俺の部屋に天使と悪魔と死神と幽霊がいる」――建御の部屋に向かった杵築が見たのは、浴衣を着た美人のお姉さん、TVゲームに夢中な黒い服の中性的少年、建御のものと思しきトレーナー一枚を来た幼女、そして存在感の全くない少年。どうやら彼らが「天使と悪魔と死神と幽霊」らしい。4人(?)とも全く動こうともしない。とりあえず幽霊こと事代和紀の死因を探ることになった……杵築には付き合っている中一の少女・ミワがいる。毎日のように「粘膜による接触」(死神による表現)を繰り返している。彼女の姉・カミナはミワを傷だらけにしていた。カミナはある「過去」を持っているのだが……。
「天使と悪魔と死神と幽霊」が揃う、という冒頭は、同著者の人気シリーズ「涼宮ハルヒ」の「宇宙人、未来人、超能力者」を連想させる。そんな「突飛な設定」を先に与えて物語を作っているのではないか、という気がしないでもない。前半の展開がモタモタしていて読み進めるのに苦労したが、事代の死の真相と動機が判明するあたりから俄然面白くなる。「動機」はミステリでは有名なパターンのバリエーションだが、そこに不条理な設定が加わるので怖さと可笑しさが同居するような印象を受ける。そして全体を支配しているのが××、なところが「閉じられた世界」たる所以なのだろう。あまり読み慣れないタイプの小説なのだが、「セカイ系」ってこんな感じなのだろうな。ラスト一行がなんとも怖い。