藤井青銅『東洋一の本』

東洋一の本

東洋一の本

山口県出身の著者は、「秋芳洞」が地元の自慢だ。なんたって「東洋一」なのだから。ところがある日、沖縄にも東洋一の鍾乳洞「玉泉洞」があることを知る。いつの間にか抜かれていたのか? しかし秋芳洞は現在でも「東洋一」を謳っている。さらに調べると、他に3箇所の「東洋一の鍾乳洞」があった。一体どこが本当の「東洋一」なのだ? いや、そもそも「東洋一」とはなんなのだ? どこからが「東洋」なのだ? 誰が「東洋一」を認定しているのか? ふとした疑問と劣等感から、「東洋一」を巡る果てしない調査の旅が始まった。
こんな「くだらなくて意味もない」調査モノが大好きだ。調査の範囲が「ネット検索」とか「朝日新聞見出しデータベース」とか、知り合いの聞き込み調査とか、果ては「西洋人」から見た「東洋」のイメージについて、「パックンマックン」のパックンにインタビューするという、なんとも行動範囲の狭いものだったりもするのだが、それでも結構面白い結果が出ていて興味深い。また「東洋一」を謳っている施設を管理するところに取材すると、きまってまず「うろたえる」のも面白い。今まで誰もそんなこと考えたこともなかったし誰にも聞かれたことがなかったのだろう。その後も、「東洋一」が使われていた年代調査、施設探訪、さらに「東洋」のついた会社の考察を経て、ある結論に達することになる。まあそれは興味を持ったら本書を読んでいただくことにして、キーワードを少し書いておこう。「西洋コンプレックス」または「西洋への憧れ」である。もちろん、これだけではないのだが。
著者は放送作家でもあるそうで、所々で「くすぐり」の文章があるのも楽しい。データベースの結果を列挙したあとで、

どうせ読者は飛ばし読みをしてるだろうが、数がぐっと増えてきたのはわかるはずだ。

と落とす。私も見事に飛ばし読みをしていたのでツボにはまった。
なお、「東洋一学会」というサイトがあるそうです。
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