タイガー&ドラゴン第9話「粗忽長屋」

上手いなあ……元ネタの「あり得ない話」を見事に現実の話に移植している。一見嫌な男であるヤスオにもごく僅かながらいい部分を持っている、というあたりが人情話になるのだが、それ以外があんまりにも優柔不断なんで、もう殺されろよ、とか思ってしまうわけだが。小虎の落語のオチは読める(元ネタを踏襲しているから当たり前だ)が、その後のあの大オチは読めなかったなあ。まさに粗忽男の典型。


あと先週の第8話「出来心」全編も観た。これも上手くアレンジされているが、小虎の落語のオチ「裏は、花色木綿」って、元の「出来心」の噺を知らないと(ついでに言えば、オチが二種類あることを知らないと)あの瞬間笑えないわけで、みんな目の肥えたお客さんばかりなのかなあ。落語をあまり知らないメグミも笑っていたのが不思議。
時間稼ぎに高座に立つ組長が一番の見せ所だった回でもある。あの部分だけは客席も演技の笑いではなく、本当に笑っていたのは間違いない(笑いの「声質」が全く違う)。
・飛行機でスチュワーデス(客室乗務員)が「おしぼりでございます」「おしぼりでございます」……で、組長の時、顔を見てヒビッたのか、「おしぼりでござる」と言われたので、「かたじけない」と答えた。
・後ろの客が指で頬をなぞりながら「これ」と(組長のことを)言っていたところに振り返ったら、瞬間固まった客が、そのまま指で顔を一周させた。
どちらも聴いたことがある話なので、「鶴瓶噺」としての持ちネタなのだろう。やっぱり風格が違うというか、高座に違和感が全くない。プロなのだから当たり前だ。