芦辺拓『三百年の謎匣』
- 作者: 芦辺拓
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/04/21
- メディア: 単行本
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と、いう事件をマクラにして、その「書物」に書かれている物語が語られ、そこから事件の謎か明かされる。しかもその物語が、時代も舞台も小説のタイプまで全く違う6つの話で、アラビアン・ナイト風東方奇譚、海洋活劇、東方見聞録風中華物語、「かの名探偵」が割り込むウエスタン、飛行船を舞台にした推理劇、とバラエティに富んでいる。見事に描き分けられたそれらの「物語」を楽しむのが本作のメインであるとも言える。それぞれの作品には(意図的に)謎が残されたまま、という趣向があり、それが結末に結びつく。だからそれぞれの短編はミステリ的にはやや消化不良に思える(それらも最後にはきちんと解明されるが、雑誌で読んだ読者は戸惑ったかも)ものの、「北京とパリにおける〜」のバカミス振りが最も面白い。現代の事件の謎も、全体のネタが壮大な割には、あれーそんな程度か、なトリックだったりもするが、「書物」のトリックで事件のトリックを語るという構成には唸らされた。