鳥飼否宇『痙攣的 モンド氏の逆説』

痙攣的

痙攣的

ポカーン……。
な、なんじゃこりゃ?? すげえトンデモなミステリだ。いや、バカミスの極北だ。
ライヴの最中にバンドメンバーが全員消え、ステージ上にプロデューサーの死体が転がっていた「廃墟と青空」はちょっと無理矢理ながらも、大掛かりなことをやろうとした意気込みを買いたいし、「闇の舞踏会」は「○×」という単純なダイイングメッセージから解釈がいくらでも登場する多重解決が楽しめる。「神の鞭」は事件の解決よりも人工的に落雷を発生させる舞台装置の方が面白かった。でもそれぞれにラストで「あれ? なにこれ?」というオチが待ち受けていて、これは一体なんだろうと思っていたら、「電子美学」でいきなり訳の分からない世界に引き擦り込まれる。西澤保彦の某長編を想起させるが、それよりも複雑というかトンデモすぎ。変な物語に動揺しているうちに最後の「人間解体」で読者を放置したバカミスワールドへ突き進む。これはもう爆笑するか呆れ果てるかしかない。バカミスを受け入れられない人は、激怒必至だなあ。これほど逸脱する物語は類例がないだろう。私は、オッケーです! バカミス最高です! 『昆虫探偵』や『本格的』から、更なるステージに到達してしまった鳥飼否宇。今後どうなっていくのだろうか。