伊坂幸太郎『死神の精度』
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/06/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 148回
- この商品を含むブログ (657件) を見る
『「ひどすぎです」彼女はうなだれて、生気のない目で私を眺め、力なく微笑むと、「死にたいくらいですよ」と言った。
君の願いは叶う。声を上げそうになる。』(17ページ、表題作より)
ただし、これが他の作家による作品なら「すごい傑作だ!」と大絶賛しているところなのだが、これは伊坂幸太郎の作品なのだ。作者には大変申し訳ないが、私の中でこの作者に求めるハードルはとても高い。この完成度でも満足できない気がした。小説としては全て申し分のない傑作だが、ミステリとしては物足りなさが残る。プロットに詰めの甘さを感じてしまった。もっともっと意外性を求めてしまう読者としての私がいるのだ。
表題作はその中でも「意外な動機もの」として、ミステリ的にも完成度が高い。嵐の山荘ものという本格の王道ネタに死神を絡めた「吹雪に死神」、全てを達観した老女との会話が楽しめる「死神対老女」あたりもお薦めだ。いや、小説としては全て最高なのだ。いつまでも読んでいたいと思ったくらいだ。