新城カズマ『サマー/タイム/トラベラー1』

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

これは時間旅行(タイムトラベル)の物語だ。
といっても、タイムマシンは出てこない。時空の歪みも、異次元への穴も、セピア色した過去の情景も、タイムパラドックスもない。
ただ単に、ひとりの女の子が――文字どおり――時の彼方へ駆けてった。そしてぼくらは彼女を見送った。つまるところ、それだけの話だ。
だからこそぼくは、ある場所のことから語り始めなくちゃいけない。ぼくらが住んでいた、あの街のことを。

内容紹介として、第1ページをそのまま引用してみた。その女の子、悠有(ゆう)が学校のマラソン大会で、ゴールテープの前後を一瞬だけ「跳んだ」ことから物語が始まる。その現象の謎を解くために饗子、コージン、涼、そしてぼくは〈プロジェクト〉を結成する。とは言ってもその〈プロジェクト〉では古今東西のタイムトラベル小説・映画などを蒐集して議論するのがメイン。それぞれの登場人物はキャラが立っているし、青春小説として楽しく読めるが、物語は遅々として進まない。後に後に引っ張る記述ばかりで、連続放火事件も全く手掛かりがなくまだ続きそうな予感を残したまま2巻へ。壮大なプロローグか、連ドラの第一話だけを読んだような感じだった。
TT小説(タイムトラベル小説)好きには、山のように登場するTT小説と、それを体系的に纏めようとする試みが面白い。でも『リプレイ』出すなら、佐藤正午『Y』も入れて欲しかったな、とか言い出すときりがないんでしょうね。