深谷忠記『審判』
- 作者: 深谷忠記
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2005/04/16
- メディア: 単行本
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深谷忠記の小説を読むのは始めてである。どうも「乱歩賞次点作家」というイメージが先行してしまい、食指が動かなかったのだ。かつてはトリッキーなミステリや、時流に乗ったようなトラベルミステリーを書いていた印象があったが、本作は、物語性を重視しながらもトリッキーな構造で読ませる小説だった。誘拐事件の当事者たる母親、捜査した刑事、「犯人」とされた男の三人を軸に進むが、途中からプロットが意外な方向に、しかも大きく動くので驚かされる。多重どんでん返しと意外な落しどころ。なんだ結局××じゃんかよ、とも思ってしまうが、ラストに提示される「司法の問題」には考えさせられる。叙述上もアンフェアな記述は、恐らくないのだろう。綱渡りのような巧みな構成と、まるでルポルタージュのようにリアルな記述で読ませる傑作と言えるだろう。