ポール・アルテ『カーテンの陰の死』

公園で起こった凶悪な殺人現場に偶然居合わせたマージョリーは、その犯人らしき人物が自分の下宿に入って行ったのを目撃した。あれは一体誰だったのだろう? その下宿で今度は住人の一人がカーテンで仕切られた玄関でナイフを突き立てられて死んでいた。被害者は以前「殺人を計画している人物がいる」と警部に警告に来ていたヴァイオレット・ガーフィールドだった。しかもその犯行方法は、75年前に起こった事件とまるで同じだったのだ。一癖もふた癖もある住人ばかりの下宿の密室事件は解決出来るのか?
年一作ペースで訳されているポール・アルテもそろそろパターンが見えてきたか? 舞台設定は面白いし謎の引っ張り方もいいのだが、真相を聞かされるとややテンションが落ちる感じがした。75年も解明できなかった謎解きがこれなのか、みたいな。それでもカーを意識してどこまでも密室にこだわるところと、読者を楽しませようとする姿勢、そして小説の適度な分量は素直に評価したい。