北森鴻『写楽・考』

民俗学本格ミステリを融合させた著者の人気シリーズ「蓮杖那智フィールドファイル」の3冊目。恥ずかしながら、単行本の形でまとめて読むのはこれが初めてだったのだが、これはいいね。民俗学の謎が解かれると同時に事件の謎も解けるという融合性の見事さ。各短編の切れ味も素晴らしい。蓮杖先生のクールさも決まっている。私も耳元で囁いて欲しいくらいだ。ミニコメ。
「憑代忌」:人形の死が殺人を予告するのか? 単純ながらもよく考えられたロジックに感心。この短篇集では個人的ベスト。
「湖底祀」:湖の底に鳥居が発見された。その意味するところは……。鳥居の謎が解かれた上に、事件が浮き彫りになる、見事な展開。
「棄神祭」:「あの御仁か」の言葉の謎と論理の融合が素晴らしい。
写楽・考」:読んでも読んでも写楽が登場しないので、タイトルに偽りありでは、と思っていたが……なるほどそう落とすのか。メインは有名西洋画家の謎です。
(この感想はゲラを読んでのものです)