瀬名秀明『デカルトの密室』
- 作者: 瀬名秀明
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/08/30
- メディア: 単行本
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『パラサイト・イヴ』から10年、長編では『八月の博物館』から5年。著者のSFミステリはまた新たなステージに到達したようだ。「ようだ」と書いたのは、この小説が私の理解を遥かに超えており、充分に理解出来ていないと思うからだ。だからといって、ただ難解な物語ではなく、読んでいる間は面白いのだから不思義なのだ。
ロボット技術が進み、ほとんど人間と変わらないロボット(擬態エージェント)が登場している近未来での事件。ミステリ的に進行するし、「密室」という言葉が使われるが、物理的な密室ではなく、概念的な密室のような感じで、そこにデカルトの哲学(我思う、ゆえに我あり)が絡んでくる。いかにも理系な作家が考える密室ミステリなのだ。で、この辺の展開がちょっと難しすぎて、作品世界そのものをイメージするのは結構大変かも知れない。でもそういうのが却って知的刺激になって面白い。「2001年宇宙の旅」や「スウィング・ガールズ」などの映画の引用もあったり、エラリイ・クイーンのミステリが引き合いに出されたりするのも楽しい。「フレーム問題」は全く知らなかったのでネットで調べてしまった。普通のミステリとは明らかに違うレベルにある小説を読んだような印象だった。
(この感想はゲラを読んでのものです)