倉知淳『猫丸先輩の空論』

猫丸先輩の空論 (講談社ノベルス)

猫丸先輩の空論 (講談社ノベルス)

妙な事件が起こるところに必ず現れる謎の小男・猫丸先輩の事件簿。毎朝ベランダに一個ずつ置かれるペットボトルの謎、交通事故現場に集結させられるタクシー、差別と虐待を受ける子猫、密室状態のテントの中で割られていた「スイカ割り」のスイカ、5キロのステーキを前に突如失踪する大食い女性、残業で一人残された会社の各部署に鳴り続ける謎の電話、の6つの謎。
猫丸シリーズの最大の魅力は「謎作りの上手さ」にあると思っている。発生している謎が本当に奇妙奇天烈なものなので、解決が気になって仕方がなくなり、一気に読まされるというパターンだ。しかも語り口が面白い。猫丸先輩の描写も毎回楽しくて、いやーこんな人近くに欲しいなあ、とか思ってしまう(あいや、謎に巻き込まれるからやっぱりいなくていいかも)。ただ今回の短篇集は、謎解き部分がどれも弱いのが残念だ。しかも「これは仮説の一つだから真実かどうかは分からないよ」ということが強調されすぎていて、結局どうなんだよ、と突っ込みたくなる作品もあったり。その謎解き部分で一番感心したのがボーナストラック的作品の「夜の猫丸」だったというのも、全体的レベルダウンを象徴しているようだ。読んでいる間は楽しいから許せるけれどね。