ジャック・リッチー『クライム・マシン』

クライム・マシン (晶文社ミステリ)

クライム・マシン (晶文社ミステリ)

軽妙な語り口と奇妙なシチュエーション、ラストの切れを堪能できる短篇集。とにかく楽しい。冒頭に配された表題作はストーリーが大体読めてしまうものの、途中までは「もしかしたら……」と思わせるだけのディテールは面白い。が、むしろそれ以降の短編に光るものが多い。死を宣告された男が社会の悪を成敗していく「歳はいくつだ」は特に後半の展開が素晴らしい。MWA賞にも選ばれた「エミリーがいない」や、ホラーのようなギャグのような珍妙な話なのにラスト一行で怖くなる「デヴローの怪物」、そして「かの男」がもし私立探偵だったら、の「もしもシリーズ」ぽい設定と、意外にもミステリとしてよく出来ている「カーデュラ探偵社」シリーズなどは必読。どう紹介しても、実際に読んでみないと味わいが伝わらないタイプの短編作家だろうと思う。