フィリップ・クローデル『リンさんの小さな子』
- 作者: フィリップクローデル,Philippe Claudel,高橋啓
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2005/09/17
- メディア: 単行本
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クローデルはミステリ作家ではない。『灰色の魂』で有名なフランスの作家だそうだ。リンさんの祖国については明記されないが、ベトナムを指しているらしい(クローデル本人も、ベトナムの子供を養女にしているそうで、その辺りの体験も一部作品に生かされているのだろう)。ベトナム戦争で息子夫婦を失った老人の孤独と哀しみを描いた作品で、ラストではその孤独感が一層増幅されて泣ける――というのが一般的な評価だろうと思う。しかしミステリマニアの視点で読むと、これはどう考えてもアンフェアでバカミスだ。それ以前に私は序盤から、着地点がそこにあるだろうなあということが読めてしまっていたので、やっぱりと思うと同時に、叙述上の処理に統一性がないことに逆にイラついてしまった。今年いろんな意味で話題になった某ミステリの序盤で「くすぐり」として使われていたトリックを、話のクライマックスに持って来られても、何を今さらこんな幼稚な手を、と思うだけだ。
これらの感想はあくまでも「本作をミステリとして見た場合の評価」なので、一般とはずれているだろうことをお断りしておく。