福田栄一『玉響荘のユーウツ』

玉響荘のユーウツ (トクマ・ノベルズ Edge)

玉響荘のユーウツ (トクマ・ノベルズ Edge)

俺は4日後までに現金五百万円を作らなければならなくなった。経営していたメイド喫茶が、従業員の誠による持ち逃げをきっかけに資金難になり、莫大な負債を抱えることになってしまったのだ。しかも債権回収業者が悪徳な奴で、金が返せなければ二十万円につき指を一本落とすと言ってきた。窮地に陥った俺だったが、すぐに救いの手がやってきた。亡くなった祖母からアパートを相続することになったのだ。アパートはオンボロだが、売却すれば借金も返せて新たに店も始められるではないか。俺は早速アパートの住人たちに「退室届」を書いてもらおうとしたが、そう簡単にみんなハンコを押してくれるわけがない。しかもこの住人たち、それぞれに複雑な事情を抱えているようなのだ。住人を退室させるため、俺は動き出した……。
冒頭の設定は面白いし、ストーリーもラノベ調に展開していくので、読むのは楽しい。のだが、いくら大家になったからといって「四日以内に住人に退去を約束させる」のはいくらなんでも強引というか法律違反だろうと思われるのだが、住人はおろか不動産屋も何も言わないのが不思議。他にも、あまりにもご都合主義的な展開ばかりなので辟易してしまう。まあ、そのあたりを気にしていたらこういう小説は読めないのだろうし、これはフィクションだからと割り切って読めば楽しいので良しとしよう。