エラリー・クイーン『間違いの悲劇』
- 作者: エラリー・クイーン,飯城勇三
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/01/20
- メディア: 文庫
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エラリー・クイーン(ハヤカワでは「エラリイ」だが、ここは創元の表記に合わせる)が『心地よく秘密めいた場所』の次に発表する予定だった作品の、ダネイによる「概要」を中心とした作品集。上のあらすじはもちろんその概要「間違いの悲劇」のものだが、これは是非とも完成された小説の形で読みたかった、と思わせるほど面白いものである。何度も訪れる衝撃の事件(概要では「デッドエンド」と表現される)、解決編での多重どんでん返し。作中に一瞬「ライツヴィル」という地名が登場するが、まさにライツヴィル・シリーズ時代を思わせる深いテーマを含んだ作品である。概要の段階でこんなに面白いものを書いていたことも恐れ入るしかない。さすがはエラリー・クイーンである。
他の単行本未収録作品も、EQらしい面白さはあるが(ダイイングメッセージものなど)、全体的には弱い。「パズル・クラブ」はどれも本当にただのパズルだし、「オーストラリアから来たおじさん」に至っては一瞬でネタがバレバレだ。「動機」の動機設定はなるほどと思った。
なお巻末の有栖川有栖氏のエッセイにて、「間違いの悲劇」は日本で小説化する計画があったらしく、有栖川氏に声がかかり、さらに綾辻氏にも協力を依頼していたというエピソードが明かされている。結局は著作権関係で折り合いがつかず、計画そのものが中止されたそうだが、それは勿体無いというか、見てみたかった気がする。