雫井脩介『クローズド・ノート』

クローズド・ノート

クローズド・ノート

大学生の香恵は、大学に通いながら文具屋で万年筆を売るバイトをしている。サークル活動でマンドリンも弾いており、楽しい日々を送っているものの、なんとなく物足りなかった。ある日、部屋の奥からノートの束を発見する。どうやらこの部屋の前の住人が忘れたままにしているものらしい。ノートの持ち主は「真野伊吹」という名の小学校の先生らしく、先生としての毎日が描かれていた。このノートを読みながら、勇気付けられていく香恵。そしてこのノートが、香恵にも変化をもたらそうとしていた……。
クライマックスは、なるほどそう来るか、と感心した部分もあったのだが、前半があまり乗れなかった。作品の肝になるノートと香恵との関わりがなかなか見えなかったこともあったし、それ以前にノートを少しずつ読むことが個人的に「それはないだろう」と思ったりする。よほどの分量だったのかも知れないが、私なら気になって最後まで一気に読んでしまうだろう。全体的に「くさ過ぎる」展開も気になった。著者のあとがきで、このノートにモデルがあることが明かされるのだが、それを含めて考えると、確かに感動的だ。しかし作品のみの評価になるとちょっと微妙なところ。あまり本を読み慣れない人たちには受けるかも知れないが、活字中毒者には物足りないだろう。
(この感想はプルーフを読んでのものです)