井上夢人『ザ・チーム』

the TEAM

the TEAM

能城あや子は盲目の「霊導師」である。バラエティ番組の一コーナーとして始まった彼女の霊視が当たると評判になり、徐々に彼女のコーナーが拡大されていったのだ。だが実は、彼女の霊視には「裏」がある。依頼人の素性から、霊的な悩み事に関するデータまでを事前に調査するチームが存在するのだ。そして時々その調査から、現実の事件が明らかになってしまうことがある。それらも全て、番組上で「能城あや子の霊視」が明らかにするのだった……。
と、いう話が、8回ある。
と、書いてしまうと鯨統一郎と同じ感想になってしまう。確かに上に書いた通りの話ばかり続く。しかしさすが井上夢人、それぞれの短編にちゃんと変化をつけて、飽きさせないようにしているのだ。能城あや子の霊視をインチキだとして秘密を暴こうとする週刊誌の編集者がいたり(結局は負けてしまうのだが、彼との勝負は一度では終わらないのだ)、能城あや子の過去を知る人物がやって来たり。それぞれの事件の真相も意外性がある。本来インチキであるはずの「事前調査」から現実の事件が明らかになっていくのだが、そっちの方が遥かに悪質なので、「事前調査」チームの方が親近感が沸いてくるのだ。全体的に派手さは感じないが、井上夢人の騙りの巧さに浸れる連作集である。