柄刀一『ゴーレムの檻』

ゴーレムの檻 (カッパノベルス)

ゴーレムの檻 (カッパノベルス)

『アリア系銀河鉄道』に続く、宇佐見博士シリーズ。トリックのために非現実的な空間まで作ってしまう、正に本格原理主義的な短編集だ。エッシャーの絵画世界や、「シュレーディンガーの猫」の世界を舞台にしたり、「見えない人」テーマに新たな方向性を呈示した作品も楽しめるが、やはり密室からの脱獄トリックをメインにした「ゴーレムの檻」と「太陽殿のイシス」の二作品は傑作である。とりわけ前者は「脱獄トリック」の概念そのものを覆しており、密室トリックの歴史に残るのではないか。後者も単純ながらも盲点を巧みに突いていて面白い(「ゴーレムの檻」であんなすごいネタを使った直後に、こんなの使うなんて!)。柄刀のトリックへのこだわりと、その見せ方が楽しめる短編集である。