藤岡真『白菊』

白菊 (創元推理文庫)

白菊 (創元推理文庫)

相良蒼司は「デゾルブワールド」なる番組で自身が持つ超能力を発揮している……が、ただのインチキで、客席の人たちのデータを事前に得て、それを元に超能力の「振り」をしているだけだ。相良の本業は画商だが、その彼に、ロシアの画家・ポントリャーギンの謎の絵が持ち込まれた。その絵を見た瞬間、相良には「白菊」が見えた――その相良を狙う影、依頼人の失踪、そして記憶喪失の女。彼の周りで、一体何が起こっているのか?
ゲッベルスの贈り物』や『ギブソン』ほど派手ではないが、この作家の凝りようが分かる作品だ。結末はやっぱり捻くれているし、真相を知って最初から読み返すと「ああ、ここはそういうシーンだったのか」とか発見が多い。藤岡真は伏線の作家なのだ。似非超能力探偵、みたいな設定も上手い。気負いこんで読むと拍子抜けするかも知れないが、楽しめる小説。絶対に続編があると思うので、期待したい。