第3回本屋大賞

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4/5の発表式に参加してきました。

今年もいろんな方々と挨拶させていただきました。お世話になりました。小川洋子さん、恩田陸さんにも挨拶できたのが嬉しかったですね。リリー・フランキーさんにはさすがに声を掛けられませんでした。


さて、『東京タワー』という結果には、既に批判的な意見が非常に多い。結果を知った瞬間、脱力した人はかなり多かったろう。実は私も脱力した。私ごときが騒いでも、大勢が動くわけがなかったのだ。
しかし、批判する皆さんは、果たして『東京タワー』を読んでいるのだろうか? と問いたい。「泣ける話らしい」ということしか知らない人も実は多いのではないか。130万部を突破したらしいが、それを「もっと売りたい」などと言われても……という前に、まずは読んでみていただきたい。130万部が200万部になっても、それはそれで一つの結果であり効果だと思う。これからドラマ化があるから、「本屋大賞」の効果そのものは読み難いのだが。
投票する側もみんな悩んでいたようだ。その上の結果がこうだったことも明らかにしておきたい。「本屋大賞2006(本の雑誌増刊)」から勝手ながら引用させていただく。

散々悩みました。今回は、本屋大賞の意義ってなんだろうかと深く考えさせられる投票でした。
(中略)
しかし、この2作品(引用者註:『東京タワー』と『容疑者Xの献身』)しかないと考えている身としては、このほかの作品が選ばれることにすごい抵抗を感じます。将来、受賞作を見返したときに、これ以外の作品がとっていた場合、「その作品が上記2作品を上回っていたと当時の書店員は思っていたのだ」と思われるのが嫌なのです。
ジュンク堂書店・K氏のコメントより)

丸善○○店のKさんも「売れてるし、そりゃ泣くよ!って話しだしこれ選んじゃうの悔しいけど……。でもしょうがない、だっていいんだから!」と二位に投票している。
(編集後記より)

今年の結果は今後の本屋大賞の方向性を変えてしまうかも知れないし、来年はこれとは正反対の方向に動くかも知れない。全てが素人による賞なので、こればかりは全く分からない。しかし、これだけ売れながら無冠だった作品に「本屋大賞」が与えられたのは、良かったと思う*1


と、ここまで擁護しておいて書くのもあれだが、私は一次も二次も、『東京タワー』には投じなかった。一次は『魔王』、『少女には向かない職業』、『海の底』に、二次は『魔王』、『ベルカ』、『さくら』に投じた。
『東京タワー』は既に売れている、という理由もあったが、「小説」ということに違和感を感じたのが大きかった。読めば分かるが、この作品は「小説」というレトリックとは明らかに違う。エッセイに近い雰囲気である。しかも実話を元にしているから、ノンフィクションの性格が強い。「小説作品」に与える賞に、純粋な創作ではない作品を選ぶのは違うのではないか、と考えた。また、「泣ける」のは確かだが、このくらいのネタなら誰だって持っているのではないか、とも感じた。私も10年くらい前に父親を亡くしているが、その話や母親の話を書けば、『東京タワー』が3冊書けるくらいのネタがある。リリー・フランキーのような文才を持っていないから書けないのだ。肉親の死が涙を誘うのは、人間として当然の感情なのだ。


個人的には、伊坂幸太郎にこそ「本屋大賞」をあげたい。あげたいが、来年も多分票が割れるし、その前に直木賞取ってしまうだろうなあ。

本屋大賞2006

本屋大賞2006

*1:実際は「みうらじゅん賞」を受賞しているのだが