一橋文哉『闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相』
- 作者: 一橋文哉
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/01
- メディア: 文庫
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「一億総探偵化」した事件を細部まで突っ込み、振り返った傑作だ。驚くべきことに、あんなに世間を騒然とさせた事件そのものは、わずか1年程度でしかなかったのだ。その間、グリコ、森永ともに200億以上もの損失を与えてしまったのだから、事件の大きさ、影響力の大きさも伺い知れる。事件発生の6年前に、まるで「グリコ・森永事件」を予告したかのような告白をしている「53年テープ」の存在、江崎グリコそのものが抱えていた歴史的背景とグリコへの怨念、江崎社長が住んでいたマンションが「金大中事件」で金大中氏が監禁されていたマンションと同じだった(!)という事実からも浮かんでくる韓国コネクション……脅迫状と毒入りお菓子のことばかりがクローズアップされていたが、実は犯人に迫るデータはこんなにもあったのだ(まだまだある)。グリコへの怨恨からの犯行か、金が欲しかっただけなのか、それとも株価操作だったのか。様々なアプローチで浮かぶ犯人像は、どれも怪しいようにも見えるし、決め手に欠けるようにも見える。作品中に「最重要参考人M」として何度も登場する「キツネ目の男に間違えられた男」宮崎学も、こうして書かれると、やっぱり限りなく怪しい。しかし、結局真相は闇の中なのだ。