我孫子武丸・有栖川有栖・霧舎巧・貫井徳郎・法月綸太郎・麻耶雄嵩『気分は名探偵』

2005年に「夕刊フジ」で連載・出題された「犯人当て懸賞ミステリ」の単行本化。路上で発生した「ストーカー殺し」は、野外密室状態だった……有栖川有栖「ガラスの檻の殺人」、吉祥院と桂島の迷(?)コンビ、別荘の皆殺し事件に挑戦……貫井徳郎「蝶番の問題」、名探偵・木更津悠也が大学で起こった殺人に挑む……麻耶雄嵩「二つの兇器」、疾走する新幹線の洗面所で男が倒れたところに容疑者が次々と現れて……霧舎巧「十五分間の出来事」、砂浜で意識を取り戻した男は記憶を失っていた……我孫子武丸「漂流者」、容疑者はヒラド・ノブユキ、同名の怪しい男は3人いた……法月綸太郎ヒュドラ第十の首」の6作品。
座談会でほぼ全員が言っているが、新聞連載で犯人当て、というのは、出題する側も相当なプレッシャーだろう。それを撥ね退けて、6人とも巧く仕上げられていて、全体的にもハイレベルで良質な作品集になったのではないか。ミステリとしては貫井作品が意外性たっぷりで最高に面白い。そういうネタだと分かっているのに見抜けない悔しさったらない。犯人当ての定石を覆して見せた我孫子作品にも驚かされた。法月・有栖川・麻耶作品はいかにも犯人当て的なオーソドックスな作品だが、書き慣れているのも感じられる。とりわけ法月作品は論理展開が巧いと思う(正解率が一番高いが、これは失敗作ということではなく、それだけ伏線等がきちんと提示できているということだろう)。霧舎作品が全体ではやや浮いているが、決して負けているわけではない。ユニークな作品だと思った。
巻末の覆面座談会は、ある程度知っていればバレバレだと思う。私はすぐに全員判りました。