歌野晶午・黒田研二・大倉崇裕・佳多山大地・綾辻行人・有栖川有栖『川に死体のある風景』

東京創元社「ミステリーズ!」と、作家による作品直販サイト「e-NOVELS」の共同企画による競作集。「川に死体が浮かんでいる」という冒頭の設定のみが決められていて後は自由だが、やはりそれぞれのカラーが何となく出てくるものである。結果として、バラエティに富んだ作品集となった。以下ミニコメ。
「玉川上死」(歌野晶午):川をプカプカ流れている死体に声を掛けたら起き上がった、という、最初から「それ死体じゃないじゃん!」な反則技。しかし後半の展開にはかなり驚かされた。本作中で一番気に入っているのはこれだ。
「水底の連鎖」(黒田研二):川の底、同じ場所に車が三台、しかもみんな死者つき、という発端が面白い。探偵役キャラが活き活きとしているので、シリーズ化して欲しい。
「捜索者」(大倉崇裕):川じゃなくて山の事件なんですけど……トリックは良く出来ていて感心させられた。
「この世でいちばん珍しい水死人」(佳多山大地):ミステリ評論家・佳多山大地の初小説。書評家が小説を書くのはかなり勇気が要ると思われるのだが、軽くクリアしている。逆転の構図も素晴らしい。コロンビアという特殊な国のため、舞台がイメージし難かったのが残念。
「悪霊憑き」(綾辻行人):ある意味、卑怯な作品(批判じゃないですよ)。そういう方向へ持って行きますか。でもやっぱり読ませるし、巧いのだ。
「桜川のオフィーリア」(有栖川有栖):江神シリーズというだけで、ファンなら読むべし。真相は意外というわけではないが、美しいと思った。