島田荘司『帝都衛星軌道』
- 作者: 島田荘司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/05/26
- メディア: 単行本
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島田荘司自らが「自信作」と言い切る作品は、表題となっている誘拐事件を前編・後編として、合間に別の中篇「ジャングルの虫たち」を挟み込んだ構成になっている。その意図は分からなくはないが、関連性がさほど高いわけでもなく(クライマックスで展開される都市論の一端が垣間見える程度のもの)、別にこういう構成にしなくてもいいのではないかと感じた。そこに目をつぶれば、いかにも島田荘司らしい作品だ。彼の普段からの主張が凝縮されているように感じるし、冒頭の奇想的なストーリーを論理的に解決させる手腕も相変わらずだ。ただ、最後に明かされているわずか一冊の〈参考文献〉に拠りかかった部分がかなり多そうで、そこから触発されただけではないかと思ってしまう。そのわずか一冊からこれだけの話を作ってしまうところが、島田荘司が島田荘司たる所以なのだが。さながら現代版『火刑都市』ではなかろうか。