「文蔵」2006年8月号

文蔵 2006.8 (PHP文庫)

文蔵 2006.8 (PHP文庫)

PHP文庫と同時に発売されているPHPの文庫型文芸誌「文蔵」。今月号は「夏休みに楽しみたいおすすめミステリー」特集で、瀬名秀明森博嗣インタビューや、ミステリ専門誌(「ミステリマガジン」「小説推理」「ミステリーズ!」)の編集者がお薦めするミステリーなどが楽しめます。
そして書き下ろし短編が2作品。
石持浅海「金の携帯 銀の携帯」:携帯を修理する間に使う代替機としてショップのお姉さんが出した最新機種にはそれぞれ5千円分と5万円分の電子マネーが残っていた。どっちを借りるべきなのか? ……と、店頭で悩み続けるだけの短編。たったそれだけなのに、裏の裏の、そのまた裏を読んでいく、いつもの石持作品の乗りなので笑ってしまう。
乾くるみ「卵消失事件」:こちらも乾くるみらしい短編。バカバカしいようなアイデアのために、多分相当な労力を費やしているに違いない。同様のネタを使ったもっと完成度の高い前例もいくつか思い浮かぶが、このネタに挑んだだけでも素晴らしいと思う。とりあえず何も言わずに読んでみてよ、と人に薦めたくなる作品だ。
石持は「隔月連載」となっているし、乾は副題が「カラット探偵事務所の事件簿1」となっているので、二人とも、この雑誌で今後作品を発表していくようだ。