芦辺拓『探偵と怪人のいるホテル』

探偵と怪人のいるホテル (幻想ミステリ作品集)

探偵と怪人のいるホテル (幻想ミステリ作品集)

本格原理主義者・芦辺拓が書いたファンタジー作品集。ミステリ色は薄いので、比較的気楽に読むことが出来る。しかしそんな世界でもメタなアイデアを次々に繰り出す著者の力業には脱帽せざるを得ない。
最初の2編は《殺人喜劇王》の登場する怪人もので、メタな仕掛けも素晴らしい。「異類五種」「疫病草紙」は珍しい初期作品。「F男爵とE博士のための晩餐会」は来日中のアインシュタインとかの怪物が出会う話、「屋根裏の乱歩者」でも乱歩と「あの監督」を出会わせており、風太郎的な趣向が楽しい。そしてその手のアイデアの究極が最後の短篇「伽羅荘事件」。鮎川哲也と三人のレギュラーキャラを一堂に集めた上、暗号なども鮎川風、そしてラスト3行に爆笑。「かの作品」は是非、このパロディを書いた著者の手で完成させて欲しいものである。(2006/10/10)