津原泰水『ブラバン』

ブラバン

ブラバン

1980年に高校時代を迎え、ブラバンに所属していた僕は、四半世紀経った今は酒場をやっている。そこに飛び込んだのは、バスクラリネット・皆元の訃報と、トランペット・桜井さんの結婚話だった。桜井さんは、かつてのブラバンに再集結してもらって披露宴で演奏して欲しい、と僕たちに持ちかけてきた。そして僕は当時のメンバーたちに連絡を取り、そのたびにあの頃を思い出す――。
広島出身の著者が、広島の高校と街を舞台に、全編広島弁で描いた青春群像劇。多くの登場人物を完璧に描き分けながら、現在と過去を自在に行き来する。「かつてのブラスバンドを再結成させる」というネタは青春ものとしてはベタでもあるが、大きな盛り上がりがあるわけでもないのに、一人一人の物語が淡々と浮き彫りになっていく。25年という歳の間隔も絶妙で、みんな大きく変わったようでもあるし、そうでもないようでもある。ラストが臭すぎるのが気になるが、こういうラストもいいものだと思う自分もまたいるのだ。読みながら、自分の高校時代を回想し、あの人たちは今ごろどうしているだろうか、と思いを馳せていた。誰もがきっと読了後、誰かに連絡を取りたくなるだろう。