「Gメン'75ベストセレクト」

Gメン’75~BEST SELECT BOX~ [DVD]

Gメン’75~BEST SELECT BOX~ [DVD]

「Gメン'75」のオープニングは一度観たら二度と忘れられないほどの強烈なインパクトを残すものであり、「Gメン」といえば誰もが、滑走路を颯爽と歩くシーンとあの音楽、そして「ハードボイルド、Gメン'75 熱い心を強い意志で包んだ人間たち」という芥川隆行のナレーションを思い出すはずだ。丹波哲郎氏が亡くなったとき、TVでよく流れていたGメンのオープニングを観ていたら懐かしくなって、DVDを借りた。私のいる店のレンタルコーナーに置いてあったのが「ベストセレクト」4枚組である。
当然昔は子供だったので、あまり細かいところまでは憶えていなかったのだが、これはただ懐かしむだけのドラマではなかった。社会問題に正面から切り込んだ、社会派警察ドラマだったのだ! 傑作と言い切ってしまっていいと思う。もっと観たくなったくらいだ。
Vol.1は関谷警部補(原田大二郎)が活躍する初期作品が中心。第2話「散歩する囚人護送車」は脚本がなんと「金八先生」の小山内美江子だ。第4話では後にGメン入りする若林豪がゲストで出ている(若林豪の他、川津祐介范文雀などもゲスト常連からGメンレギュラー入りしている。小林捻持なんて脇役でしょっちゅう出てくる)。しかしVol.1の最大の見どころは最後の「終バスの女子高校生殺人事件」。警察権力と正義感の狭間で苦悩する響圭子刑事(藤田美保子)。ラストシーンの「突き放し方」がすごい。
Vol.2はこの4枚組でも最高傑作と断言できる。沖縄ロケシリーズ三部作は、本土復帰してまだ間がない沖縄の現状を知らしめると同時に、米軍による日本人女性レイプ事件をテーマに、米軍の壁に立ち向かえない苛立ちと、その壁に挑むGメンの活躍を描く。沖縄の人々の本土の人間への感情、米軍の差別意識なども大胆に描いており、よく放送したものだとすら思う。そしてもう1話「刑法240条 強盗殺人罪」も素晴らしい大傑作! 大滝秀治の演技がすごい! 冤罪というテーマも重い! これはミステリファンならば必ず観なければならない作品だと思う。
Vol.3はパリ・シリーズ三部作など。パリ・シリーズは沖縄シリーズほどのインパクトはないが、当時時効を迎えて間もなかった三億円事件を取り込んだ作品。そしてオマケのように扱われている「29の不幸の手紙」は、むしろこっちがメインだろうと言いたいくらいの傑作! 職務と人情のどちらを優先するべきか、登場人物の何人もが様々なシチュエーションで悩むことになる。
Vol.4は当時の私も好きだった香港ロケシリーズなど。スラム街の真っ只中で撮影してたりするのが今からするとすごい。草野刑事(倉田保昭)のアクションも見どころいっぱいだ。「Mr.BOO殺人事件」はタイトルからすると香港シリーズと繋がりありそうに見えるが、単に容疑者がMr.BOOのTシャツを着ていたというだけのこと。山田刑事(藤木悠)がGメンを勇退する回でもある。