大山誠一郎『仮面幻双曲』

仮面幻双曲 (小学館ミステリー21)

仮面幻双曲 (小学館ミステリー21)

双子の弟・武彦は、兄・文彦を殺す綿密な計画を立てていた。整形手術を受けて顔を変えた武彦は、証拠隠滅のために手術をした整形外科医を殺害、カルテも改竄してその場を去った――紡績会社を経営している文彦の元に届けられた新聞記事は、文彦を恐れさせるのに十分だった。武彦が別の人物に成りすまして自分を殺しに来るに違いない、とそう感じた文彦は、探偵に身辺警護を依頼した。しかし、文彦は殺された。しかも、武彦の来襲を警戒していたはずの文彦が、自ら犯人を招きいれたらしいのだ。犯人は武彦なのか、果たして武彦は誰の顔になっているのか……?
戦後まもなくの昭和21〜22年を舞台にしており、世界観はまるで横溝正史。大富豪の兄を狙う双子の弟、という設定もケレン味たっぷりだ。やや時代がかり過ぎているのが気になるものの、最後まで飽きさせることはない。意外性に満ちた真相も素晴らしい。全てがロジックのために奉仕されているようなタイプの小説なので、本格ファン以外には拒絶反応すら起こされてしまいそうだが、本格マニアによる本格マニアのための小説なので、本格読みは必読だろう。