有川浩『レインツリーの国』

レインツリーの国

レインツリーの国

『図書館内乱』の作中に登場した恋愛小説が現実に出版されたスピンオフ作品。
伸行はかつて好きだったライトノベルの感想をネットで探していたところ、「レインツリーの国」というサイトに行き当たった。そこで書かれている感想に共感した伸行は管理人と何度かメールで交流し、ついにオフで会うことに。だが管理人の女性「ひとみ」に聴覚障害があることに気付かず、やや気まずい雰囲気に……。
ネットをやっている人なら、大なり小なり一度は空想したことがきっとあるに違いない「ネットから始まる恋」を一直線に描いた小説。まあほとんど現実的ではないこともみんな分かっており、その意味ではファンタジーに近い。だが聴覚障害の女性の繊細な心理描写がよく描けていて、決して片手間仕事で書いたものではないことも伝わる。有川浩から軍事関連のネタを一切排除したらこういう小説になるのだなあ。『図書館戦争』シリーズを読んでいることが前提というわけでもなく、単独でも恋愛小説として楽しめる。