加藤隆『『新約聖書』の「たとえ」を解く』

『新約聖書』の「たとえ」を解く (ちくま新書)

『新約聖書』の「たとえ」を解く (ちくま新書)

「種まきのたとえ」「いちじくの木のたとえ」「サマリア人のたとえ」……新約聖書には、イエスによる「たとえ話」が全部で43種類登場する。伝えたいことを直接喋ればいいのに、何故イエスは「たとえ」で神の国を伝えようとしたのか。福音書によって「たとえ話」が微妙に異なっているのは何故か? 「たとえ」からイエスの、そしてキリスト教の教義の本質を探る。
我々は聖書で読む機会があるし、長年語り継がれているので「たとえ話」だと理解出来るし、キリスト教の「説教」として活用されるのも分かる。だがイエスの話を直接聞いた弟子たち、律法学者、そして民衆たちはその場ですぐに「たとえ」として聞いて、そのたとえを正しく理解出来たのだろうか。それらの点をテーマにしながら、福音書を読み解いていく。私もキリスト教に興味を持っていた時期があり、聖書も持っているが、4つの福音書の性質の違い・成立過程などは全く知らなかったので、そんな基本情報を知ることが出来たのも今回の収穫の一つ。例えば「ヨハネによる福音書」は「たとえ話」が全く登場しないことすら知らなかった(その代わり「ヨハネ」は、「わたしは光である」などの隠喩が多用されている)。
読み進むうち、ただ淡々と読み解いていくだけになっているのが気になるが、今まで全く気にしたこともなかったテーマだったので、興味深く読むことが出来た。