三浦佑之『金印偽造事件』

金印偽造事件?「漢委奴國王」のまぼろし

金印偽造事件?「漢委奴國王」のまぼろし

歴史の教科書を思い出して欲しい。その口絵の1ページ目に必ず、「漢委奴国王」という銘が彫られた「金印」の写真があったことを憶えているだろう。江戸時代に福岡の志賀島で発見されたとされ、現在でも国宝とされているが、実はそれは「偽造」されたものだったのではないか――。
『口語訳 古事記』の著者が、「金印贋作疑惑」を徹底的に追求した作品だ。金印が偽造されたものではないか、という疑惑は昔からあったらしいが、異端論扱いされて(今でいう「トンデモ説」)常に闇に葬られてきた。その謎に真っ向から挑んでいる。金印発見の経緯、鑑定などの真偽を追求し、さらに金印の真贋も検証しながら、徐々に外堀を埋めていく感じで真相にたどり着く。最後には偽造の「真犯人」と「動機」をも明示するのである。さながら良く出来たミステリを読むようである(実はミステリでも、明石散人が『七つの金印』で同様の論考をしているそうだ)。ただし、これが結論だと断定は出来ていない。ほぼ間違いないと思うが、これが本当に贋作かという決定的な証拠がないのだ。歴史を辿ることの難しさが見え隠れしている。