西牟田靖『写真で読む 僕の見た「大日本帝国」』
- 作者: 西牟田靖
- 出版社/メーカー: 情報センター出版局
- 発売日: 2006/02/24
- メディア: 単行本
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1970年生まれと、私よりも若い著者が、戦争の遺産を追っているルポとして非常に興味深い内容である。日本統治時代のある部分は現在でも文化として残り、あるものは拒絶反応として消し去られている。著者は特に「神社」に注目しているようで、各地で残る神社を追っている。それにしても、現在のサハリンに「狛犬」が残っているというのは、一種異様な光景ではある。ちなみに神社は政府の政策ではなく、在留邦人たちによって自発的に作られたケースが多いそうだ。神社に心の拠り所を求めていたのだろうか。
特に印象的なのは、台湾と韓国の違いである。日本が建設した駅舎などを文化財として保存する台湾と、過去の負の記憶を消すために潰すべきか、あえて残すべきか悩める韓国。
台湾には、日本軍飛行士を神として崇めている村がある。自己を犠牲にして村を守ってくれたことに、村人が最高級の敬意を表したのである。一方韓国には、「ここが高天原だった」と主張している場所がある。天皇家の元祖が韓国にある、と主張することによって、韓国民が優位にあることを誇示したいのである。これもまた、あの戦争がなければなかった場所かも知れない。