「幻影城の時代」

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雑誌「幻影城」は“探偵小説専門誌”として1975年に創刊され、1979年に版元倒産により廃刊した雑誌である。その後、発行人だった島崎博は故郷の台湾に「失踪」したとされたまま長らく消息不明となっていたが、近年、台湾でミステリの普及活動をしていることが判明。その島崎博へのインタビューを軸に、当時「幻影城」に関わった人々・影響を受けた人々による回顧を集めた「回顧編」と、島崎博仕事リストや細密な評論を集めた「資料編」から構成されている。
幻影城」がなければ、現在のミステリ界の隆盛はなかったかも知れない。泡坂妻夫連城三紀彦竹本健治栗本薫田中芳樹などの作家を生み、新本格作家たちにも大きく影響を与えた雑誌だ(あの舞城王太郎も影響を受けているはず。某長編を読めばそれは自明だ)。その「幻影城」に対するオマージュとして、これ以上ない形で作られた同人誌である。これほどの関係者、執筆陣を集めているだけで、商業出版に匹敵するほどの価値がある。
竹本健治は最初短篇を中井英夫に見せただけで、そのまま「幻影城」の連載が決まったなどの真相も明かされたり(いきなり1,200枚の長編を持ち込んだ、というのが今までの通説だった)、連城三紀彦はタイトルから島崎博に勝手に決められたりしていた、というのも意外だ。その他、興味深いエピソードが満載である。