伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』

フィッシュストーリー

フィッシュストーリー

伊坂幸太郎の第一短篇でもある、動物園でうつ伏せに寝る男と河原崎(父)の話「動物園のエンジン」、人探しのために宮城と山形の県境に向かった黒澤が出会う「こもり様」の話「サクリファイス」、売れないミュージシャンが残した歌が、時を越えてハイジャック事件に影響する「フィッシュストーリー」、空き巣の青年とその恋人と、補欠の野球選手の話「ポテチ」の4編。特に伊坂作品でも名脇役として人気らしい黒澤が2作品に大きく関わり、活躍する。それらも含めどれも、いかにも伊坂らしい作品、としか言いようがない。ミステリ的な驚きがある場合もあるが、そういうのを越えた部分での感動が得られるものばかりだ。個人的には、「ポテチ」のラストシーンが、良かった。とりあえずファンは必読だが、伊坂初心者でも意外と楽しめると思う。