小川洋子『ミーナの行進』

ミーナの行進

ミーナの行進

1972年、父はガンで他界し、母が洋裁の専門学校に通うため東京の寮に一年間行くことになったので、朋子は芦屋の伯父さんの屋敷でお世話になることになった。開通したばかりの新幹線で岡山から神戸に行った。そこで過ごした少女ミーナ、そしてカバのポチ子との日々……これは傑作だった。1972年といえば私は5歳だが、ほとんど記憶に残っていない。だからミュンヘン・オリンピックもその時の事件もジャコビニ流星雨も知らない。しかし何故か、懐かしさを憶える物語だ。読んでいる間、自分も1972年にいるような感じだった。所々で挿入されるイラストも効果的である。