石持浅海『人柱はミイラと出会う』

人柱はミイラと出会う

人柱はミイラと出会う

建築中の安全を祈願して地中に埋められる職業「人柱」、議場で議員のアシストをする見えない存在「黒衣」、結婚した女性が歯を黒く染める「お歯黒」、本厄の一年間は仕事を免除される「厄年」、二ヶ月に一度、全国の知事が上京する「参勤交代」……日本の古い風習が残っている不思議な世界で起こる奇妙な事件。
妙な設定と、それを巧く活かした謎解きが絶妙に絡み合うミステリ短編集だ。とりわけ表題作と「厄年は怪我に注意」は傑作。逆説の効いたトリックはチェスタトン泡坂妻夫を思わせる。最後の「参勤交代は知事の務め」だけ、ちょっと論理が無理やりな気がしたのが猛烈に惜しい。