「砂の器」と「点と線」

松本清張原作の名作映画を最近続けて観た。
砂の器」はもちろん中居正広主演の連ドラではなく、1974年の映画版。野村芳太郎監督、丹波哲郎加藤剛主演、芥川也寸志音楽のあの名作である。まずDVDで鑑賞し、特に後半の重さには打ちのめされた。
先日尾道で、大スクリーンで観る機会があった。「尾道に映画館をつくる会」の上映作品としてである。数多くの人が来場していたが、後半の「宿命」の場面、真犯人・加藤剛がピアノ協奏曲「宿命」を演奏するシーンと、彼が背負ってきた「宿命」のシーン、そして事件の真相を淡々と語っていく刑事・丹波哲郎の語りのカットバックが延々と続く場面では、場内が固まっていた。すすり泣きも多く聞かれた。DVDで一人で観るのとはまた違ったインパクトを感じた。
現代では表現できない問題がテーマなだけに、それをここまでつぶさに描いた映像は感嘆に値する。昭和史の「裏の一面」にスポットを当てた傑作といえる。是非、観て欲しい作品だ。

砂の器 デジタルリマスター版 [DVD]

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続けて、「点と線」を観た。こちらはDVDだ。原作『点と線』は、日本ミステリ史にとってもエポックメイキングとなった名作であることは重々承知しているものの、申し訳ないが私は『点と線』はミステリとしては凡作だと思う。時刻表トリックは鮎川哲也に較べれば全然大したことないし、すぐに飛行機を考慮に入れるべきなのになかなか思いつかないし。東京駅の「4分間の偶然」トリックって、そんなに凄いトリックなのだろうか? 社会性を取り込んでいる点など、物語はとても面白いのだが。
そんなわけで、映画もさほど凄いとは思わないが、この時代の邦画独特の味わいは楽しんだ。青函連絡船の乗船名簿に容疑者の名前があってアリバイが証明され、三原刑事が苦悩するシーンが一番面白かった。高峰三枝子は美しい。
「点と線」はこの秋にドラマ化されるそうだ。この現代に「4分間トリック」も不可能だし青函連絡船もないしどう処理するの? と思ったら、昭和30年代の設定になるのだそうだ。
http://www.tv-asahi.co.jp/tentosen/


点と線【DVD】

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