リチャード・ドーキンス『神は妄想である』

神は妄想である―宗教との決別

神は妄想である―宗教との決別

宗教があるから、世界から戦争がなくならない。そろそろ「神様など存在しない」という当たり前の事実に気付こうではないか、という趣旨の啓蒙書。『利己的な遺伝子』を書いたドーキンスが本気で「宗教」という難敵に立ち向かい、無神論者宣言をした本だ。

イスラムは平和」というマントラ(お経)はほとんど1400年時代遅れのものになってしまった。イスラムが平和で、平和でしかなかった時代はたった13年間だけだった。
(450ページ)

旧約聖書』の神は、おそらくまちがいなく、あらゆるフィクションのなかでもっとも不愉快な登場人物である。嫉妬深くて、そのことを自慢にしている。けちくさく、不当で、容赦のない支配魔。執念深く、血に飢え、民族浄化をおこなった人間。女嫌い、ホモ嫌い、人種差別主義者、幼児殺し、大虐殺者、実子殺し、悪疫を引き起こし、誇大妄想で、サドマゾ趣味で、気まぐれな悪さをいるいじめっ子だ。
(51ページ)

作中には数多くの引用があり、読んでいくにつれて知的好奇心もくすぐる。宗教の是非論も考えさせるが、読み物としても面白い。P.G.ウッドハウスの小説に、聖書からの引喩がいかに多く織り込まれているかが書かれていて興味深かった。彼によるとウッドハウスは「イギリスにおける軽喜劇の最高の書き手」だそうだ。