杉岡幸徳『奇妙な祭り』

日本全国の「奇祭」を季節ごとに豊富な写真入りで紹介した一冊。よく祭り関係の本で登場する古風な「奇祭」ではなく、本当に「なんだこれは」と言いたくなるようなものにまでスポットを当てている点が秀逸。
「キリストの墓」の前で踊る「キリスト祭り」、泥の妖怪が人々を襲う「パーントゥ」、女装男がお札をまく「お札まき」などいろいろあるが、なんといっても最高の奇祭は川崎の「かなまら祭り」だ。なんたって、女装した男たちが、ピンク色の男性器型みこしを担ぐのだ。「でっかいまら、かなまら!」と叫びながら。

「でっかいまら、かなまら!」という叫び声と共に、ピンクの男性器は、天下の公道を堂々と行く。面白いことに、担ぐ度に、神輿がモコモコと上下に揺れ、あたかもアレが天に元気にピストンしているように見えるのだ。一度見ると、夢にでも出そうな光景だ。

ところで本書、著者の文章がなかなか面白い。祭りの本は年寄りのおじさんが神妙な雰囲気で紹介するのが常だが、著者は若い人らしく、文中にボケや突っ込みを巧妙に混ぜて楽しませてくれる。なんたって肩書きが「奇祭評論家」である。
男たちが全裸で街中を走る「ヤーヤ祭り」の項で、その全裸(本当に全裸)の男たちが走るのを見届けようとするギャラリーを紹介する文章なんて、こうだ。

ここでも、観客は若い女性が圧倒的に多い。そして心なしか、彼女たちの瞳も、先ほどよりもはるかに、淫靡に濡れ輝いているように見える。

淫靡に濡れ輝いている……って、あんたは渡辺淳一か。
まあしかしこうして並べてみると、いかにエロやセックスにまつわる祭りが多いことか。「祭りの起源は所詮ねるとんパーティーだ」というのが私の持論なので、それが証明されているような気がする。