伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/11/28
- メディア: 文庫
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今になってみると、会話のセンスや物語展開に伊坂らしさを感じさせるが、当時にすれば、変な設定の妙なミステリで、これで賞が取れたことが凄いと思う。先見の明であろう。面白いし、読み応えももちろんある。
最も印象的な文章を挙げよう。合法的に殺人が認められている男・桜の台詞だ。
「一人の人間が生きていくのに、いったい何匹の、何頭の動物が死ぬんだ」
……
「これからは考えろ」と、命令するように彼は言った。「動物を食って生きている。樹の皮を削って生きている。何十、何百の犠牲の上に一人の人間が生きている。それでだ、そうまでして生きる価値のある人間が何人いるか、わかるか」
……
「ゼロだ」
(304〜305ページ)